百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2018年2月11日日曜日

「二月大歌舞伎」

歌舞伎座で夜の部「二月大歌舞伎」。白鸚、幸四郎、染五郎の三重襲名記念。私も生誕半世紀の年なのでお大尽感を演出して、お弁当は三越地下で握り鮨を誂え、シャンパーニュのハーフボトルを持ち込み。

「熊谷陣屋」は熊谷次郎直実に新幸四郎。まだまだ軽いかなあ……と思ったが、それが襲名披露というものなので。「壽三代歌舞伎賑」は両花道に大勢が登場し、歌舞伎座前の賑の描写から襲名口上に移る、お目出度い一幕。

忠臣蔵七段目「一力茶屋の場」は由良之助に新白鸚、力弥に新染五郎。新染五郎は初々し過ぎて、力弥としてもどうかなあ……と思ったが、それが襲名披露というものなので。

お軽と寺岡平右衛門には華やかなダブルキャストで、偶数日が菊之助と海老蔵、奇数日が玉三郎と仁左衛門。私が見た日は菊之助/海老蔵だったが、丁度いい御馳走感。おそらく玉三郎/仁左衛門を観たいお客の方が多いとは思うが、ちょっと贅沢過ぎてアンバランスでは、と想像。

とにかく華やかで縁起の良い夜の部でした。ところで、祝幕がまさかの草間彌生。どうしてそうなった。