百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2017年9月15日金曜日

秀山祭九月大歌舞伎

歌舞伎座にて昼の部を観劇。「彦山権現誓助剱(毛谷村)」、「道行旅路の嫁入」、「極付 幡随長兵衛」。毛谷村はけっこう好きな話。物凄い御都合主義なのだが、それが可笑しみで気にならない。今回は菊之助のお園が良かったような。「道行旅路の嫁入」は忠臣蔵からの舞踊。戸無瀬役の藤十郎をありがたく拝見させていただく演目か。最近、幡随長兵衛をよく観ているように思うのだが気のせいだろうか……長兵衛の女房を演じる魁春がなかなか良い。

ところで、お酒を飲みながら観ていたら、幕間に見知らぬお婆さんから「江戸切子ですか? 素敵ですねえ」と話しかけられた。昔から、年上にモテる私である。