百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2017年7月3日月曜日

七月大歌舞伎初日

ほぼ猛暑日と言ってもいいほど高温の真夏日にぶつかってしまったが、歌舞伎座へ。昼の部を観劇。

「矢の根」は曽我五郎に右團次、曽我十郎に笑也など。漫画的な一幕だが、荒事はそういうものだと目出たく観る。「加賀鳶」は道元に海老蔵、松蔵に中車など。やはり黙阿弥は台詞がいい。名調子を聞かせますよという風な、くどめの台詞まわしが私は好きだが、海老蔵と中車はあっさり流してしまう感じ。「連獅子」は右近左近と親子獅子の精に海老蔵と巳之助、僧の二人に男女蔵と市蔵。僧の二人のかけあいが軽妙で楽しい。踊りの良し悪しは私には良く分からない。

昼の部はわりと空いていたが、おそらく夜の部の「駄右衛門花御所異聞」の方が人気だからだろう。