百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2017年6月6日火曜日

自由な死について

多くのものはあまりに遅く死ぬ。ある者たちはあまりに早く死ぬ。「死ぬべき時に死ね」、という教えはまだ耳慣れまい。
死ぬべき時に死ね。ツァラトゥストラはそう教える。
むろん、生きるべき時に生きなかった者が、どうして死ぬべき時に死ねよう。そのような者は生まれて来なければよかった。— わたしは余計な者たちにそう説く。
F.W.ニーチェ「ツァラトゥストラかく語りき」(佐々木中訳/河出文庫)より