百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2017年5月12日金曜日

若いものと年老いたもの

若いものには、美しく生きるように、また、年老いたものには、美しく生を終えるように、と説き勧める人は、ばかげている。なぜなら、生きるということがそれ自体好ましいものだからであるばかりでなく、美しく生きる修練と美しく死ぬ修練とは、ひっきょう、同じものだからである。
「エピクロス —教説と手紙—」( 出隆・岩崎允胤訳/岩波文庫)、「メノイケウス宛の手紙」より