百歳にもなると、人間は愛や友情に頼らずにすむ。さまざまな災厄や不本意な死に怯えることもない。芸術や、哲学や、数学のいずれかに精進したり、独りでチェスの勝負を楽しんだりする。その気になったら自殺する。人間が己れの生のあるじならば、死についても同じである。
「疲れた男のユートピア」(J.L.ボルヘス著/鼓直訳)より

2017年4月14日金曜日

歌舞伎座で花見

天気も良いことだし歌舞伎座に行ってみるか、と突然思い立つ。隠居の身分で贅沢は禁物だが、家はなし、妻子はなし、芸者をあげるでなし、博打をうつでなし、これくらいの道楽は許されるだろうと思い、今月も歌舞伎座へ。「四月大歌舞伎」昼の部。「醍醐の花見」、「伊勢音頭恋寝刃」、「一谷嫩軍記」(熊谷陣屋)。

今年は特に花見に行かなかったので、持ち込んだ日本酒を飲みながらの「醍醐の花見」がその代わり。鴈治郎の秀吉がパタリロ的な愛らしさ。「伊勢温度恋寝刃」は福岡貢に染五郎、万野に猿之助などで若々しい配役ゆえにか、あっさりし過ぎているように思えた。そのせいか、実は途中で寝てしまったのだが。熊谷陣屋を観るのは何度目だろう。今回は直実に幸四郎、相模に猿之助など。可もなく不可もなくだが、これも猿之助向きの役ではないような。

偶然、劇場内で知り合いの長唄の師匠に会う。旦那さんが舞台で三味線を弾いているので、中日の様子を観に来た模様。幕間に「めでたい焼き」をいただいたり。鯛焼の中に紅白の餅が入っていてめでたい。舞台が終わったあと、歌舞伎座すぐ近くの店でお二人の「反省会」にお付き合いする。熊谷陣屋の最後の送り三重についてなど、舞台側からのお話が色々と聞けて楽しかった。

夕方お別れして、近所のスーパーで週末の朝食用のフルーツ、花屋で観葉植物を買って帰宅。昼にあれこれ食べ過ぎたので夕食は盛り蕎麦とお茶だけ。